Publications
TOP Seminar Publications Presentations CV Links  
 

 


論文のリクエストは下記のアドレスにお願いします。

E-mail
uonoshota1982 <at> gmail.com

 


 
論文要旨

Uono, S., Sato, W., & Toichi, M. (2009). Dynamic fearful gaze does not enhance attention orienting in individuals with Asperger's disorder. Brain and Cognition, 71, 3, 229-233.

自閉症スペクトラム症において早期にあらわれる基礎的な障害の一つが共同注意の障害であることから、ASDにおける視線処理の問題が注目されてきた。先行研究では、ASDの自動的な共同注意に障害があるか調べられてきたが、視線方向への反射的な注意シフトには障害がないという報告が多い。しかしながら、これらの実験で用いられた刺激は中性表情の視線であった。近年の定型発達者を対象とした研究では、視線方向への反射的な注意シフトは表情(特に表情変化)が伴うことで促進されることが示されている。表情変化に伴う共同注意の促進は、他者との情動共有を促進するという点で社会認知発達に重要な役割を果たす可能性がある。そこで本研究では、動的表情による視線方向への注意シフトの促進がASD群でもみられるか検討した。

具体的には、視線手がかりを呈示し、直後に現れるターゲットに対する反応時間を測定した。視線とは逆方向に現れるターゲットへの反応時間と視線と同じ方向に現れるターゲットへの反応時間の差を、視線による注意シフトの指標とした。用いた視線手がかりは中性表情のままで視線が動くものと表情変化に伴って視線が動くものであった。この実験の結果から、定型発達群では中性表情に対して動的表情の視線による注意シフトが促進されることが示された。一方、ASD群では表情自体の認識に顕著な障害はみられなかったが、動的表情の視線による注意シフトが促進されるという現象はみられなかった。

以上の結果は、先行研究では明らかになっていなかった自動的な共同注意における障害がASD群に存在することを示している。情動的な文脈での共同注意は社会認知発達に特に重要であるため、ASD者における上記の問題がより高次な社会認知機能の獲得を障害している可能性が考えられる。


関連論文

Uono, S., Sato, W., Michimata, C., Yoshikawa, S., & Toichi, M. (2009). Facilitation of gaze-triggered attention orienting by a fearful expression and its relationship to anxiety. Psychologia: An International Journal of Psychological Sciences, 52, 3, 188-197.

Uono, S., Sato, W., & Toichi, M. (2009). Dynamic fearful expressions enhance gaze-triggered attention orienting in high and low anxiety individuals. Social Behavior and Personality: An International Journal, 37, 10, 1313-1326.

Sato, W., Kochiyama, T., Uono, S., & Yoshikawa, S. (2010). Amygdala integrates emotional expression and gaze direction in response to dynamic facial expressions. NeuroImage, 50, 4, 1658-1665.

 

Copyright © Shota Uono All Rights Reserved.
テンプレート by ネットマニア